日々のつれづれその3

細々と続けてみる。

2006年5月31日 (水) マーティロと寿司

本日、ハローワークの帰りに、渋谷をぷらぷら歩いていたら、急にポストカードをだされました。
基本的に面倒くさいものは知らない振りをする私なんですが、今日はなぜか手を出しちゃったのです。
それが、某ギャラリーのポストカードだったらしく、「もらってくれてありがとうございます。全然誰ももらってくれないのに、うれしいです。ちょっとギャラリー見ていきませんか?」
とお姉さんに言われ、ついつい一時間時間をつぶさなくちゃだったので、
ちょっと見て出てくればいいかなーなんて思ってしまい、ギャラリー入ってきてしまいました。(普通はついていったりなんてしないですよ。なんだか、営業さんみたいなお姉さんの言葉になんか同情しちゃったのと、ギャラリーって響きになんだかひきつけられちゃったのと。)

さてさて、入ってみたら、名前書いてください。住所と電話番号と勤務先も!はいきました。
無職とかいうのめんどくさいから、ちゃっかり前職場の名前を拝借。すみません。

そして、シルクスクリーンとやらを説明していただく。
シルクスクリーンという方法の版画。
ひとつの色ごとに、シルクをかたどってまわりをロウでかためて、色をのせていくんだそうだ。
一枚の絵を5人から6人で連れ立って作業。なかなか時間のかかる作業だということ。
かなりオールジャンルで絵があり、ヴェネチアみたいな夕暮れの絵から始まり、ハワイの海とか、いるかとか、ノルウェーの森とか、いろいろとある。
私けっこうひとりでぼーっと絵をみるの好きなんですけれど、(心にひびく絵に出合うのをひたすら待っている感じ。)お姉さんがひたすらしゃべり続けているから、(心いくまでみせてくれないし。)ちょっと面倒くさいななんて思ってみたりして。

そんな状況で、突然お姉さんが一言。
「みなさんに聞くんですけれど、もし、この中で一番好きな絵を選ぶとしたらどれにしますか?」と。

実は、最後のならびにあった、かなりな淡色の抽象画に心奪われている状態だったので、迷わずに、この作家「マーティロ」が好きと伝えてみる。
しかも、緑がすごいきれいな絵があったので、これが好きと。

さて、どうなったか。
さあ、ではここに座ってください。と絵の前にいすをひっぱってきてくれて絵の前に座って絵についての話が始まる。

マーティロの歴史。亡命をするときに3回失敗しててしかも、3回目に足を打たれ弱ったまま監獄で絵を描き続けたらしいとか、
奥さんはおいて亡命したんだけれど、旧ソ連が解体して、自分のもといたアルメニアが独立したので国に戻ったら、奥さんが自分のいない間に死んでいたこととか。
そのあとひたすら女の人の絵ばかりを描いていたこと、
ソビエトにいたときは、国のおかかえ画家だったから、好きな絵が書けなくて、辛くて、だから、アメリカに亡命できたあとは(しかも無一文!)ひたすら、自由な絵を各方向に走ったこと。

ついでに私の選んだ彼の「夜の奏で」という作品は、
最後に会った奥さんを書き表しているんだそう。
奥さんが亡命の事実を知っていたら共犯でつかまるから、何もいえなくて、でも複雑な心境で自分と一緒にいる夫を妻はきっとわかっていたはずで、
そんな複雑な妻の表情を表しているんだと。
聞けば聞くほど目の前にある版画に愛着がわいてきて困りました。
だって、版画10枚しかないんだって。しかも、原画となると0がひとつ増えた値段になるんだって。
ローンを組んでボーナスで7万ずつ払えば、月1万5千円でいいんだって。
それで、あの絵と一生一緒にいられるんだって。

すっごく心が揺れ動きました。
しかし、120万円ですよ?
ただいま無職。これからどうなるかなんて何もわからない状況なのに絵なんか買ったら追い詰められてきつくなるのは目にみえてます。

しかも、あんなに素敵な絵なのに、白い大きな壁がないのに持ってたら絵にもうしわけない。

そんなわけで心を残しながらギャラリーからさってきました。(次の約束があったし。)

しかし、次の約束「会社のおば様方と用賀のすし屋さんでランチ2000円なり」に30分遅刻していって、理由を伝えたら、口々にこう言われました。

「それって、今流行のデート商法よ。」
「よくテレビでやってるじゃない。男の子が一緒にデートにきた女の子(ぐる)にそそのかされて絵をローンで買わされて、しかも鑑定にかけたら5万てやつ。」
「パルコの近くよねー。すぐ個室に連れて行かれるのよねー。あぶないわよ。そんなのついていっちゃだめよ。」

そうなのかなあ。
たしかにパルコで靴買ったあとだったなあ。とは思うけれど、別に個室には連れて行かれなかったし。ひたすら、お姉さんのマーティロについての愛について聞いてたようにも思うし。(ローンの話とか。今は20代で投資とか、毎日に活をいれるためにとかのために絵を買う人が多いのですよーとか。言われたけれど。)

結局よくわからないんだけれど、とりあえず、私はあの絵が好きだー。
そして、人生の目標として、心のそこから好きな絵と、その絵が問題なく飾れる白いでかい壁のある部屋を手に入れることというのが、今日設定されました。(天板のあるオーブンレンジを手に入れるのと、洗う、すすぎ、脱水の時間が思いのままに設定できる洗濯機をいつか手に入れたいのと一緒に・笑)

とりあえず、がんばればシルクスクリーンの絵なら買えることがわかったのと、マーティロに出会えたことがすごくありがたかったから、もしあれがうさんくさいギャラリーっだったとしても私にとってはありがたかったなー。

しかし、ネットでマーティロの作品みたら、実物と違いすぎてがっかり。
あんなに平板じゃなかったし、きらきらでこぼこしてたし。
色がもっと濃かった。なんだかいろいろなものがつまってた!!!

いつか手に入れたい(しかし、夜の奏では10枚しか版画ないんだそうな。うー。あれにまさる絵といつか、私が準備ができたときにであえますように。)